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月刊未来経営

会社の承継 その5 飛行機

グライダーと飛行機は遠くから見ると、似ています。空を飛ぶのも同じで、グライダーが音もなく優雅に滑降しているさまは、飛行機よりもむしろ美しいぐらいです。ただ、悲しいかな、自力で飛ぶことができません。

学校はグライダー人間の訓練所です。飛行機人間はつくりません。グライダーの練習に、エンジンのついた飛行機などが混じっていては迷惑だし、危険だからです。学校では、ひっぱられるままに、どこへでもついていく従順さが尊重されます。勝手に飛び上がったりするのは規律違反で、たちまちチェックされます。やがてそれぞれにグライダーらしくなって卒業していきます。優等生はグライダーとしては優秀です。でも、飛べそうではないか、ひとつ飛んでみろ、などと言われても困るのです。指導するものがあって初めて飛べるグライダーだからです。もちろん例外はありますが、一般に、学校教育を受けた期間が長いほど、自力飛翔の能力は低下します。グライダーでうまく飛べるのに、なにも危険な飛行機になりたくないのは当たり前です。

しかし会社の社長となれば、何が何でも飛行機としての自力飛翔が要求されるのです。

人間には、グライダー能力と飛行機能力とがあります。受動的に知識を得たり、行動したりするのが前者で、自分で物事を考え、創造し、判断し、決定し、責任を取っていくのが後者です。両者は一人の人間の中に同居しています。グライダー能力を欠いていては、基本的知識すら習得できません。何も知らないで、独力で飛行しようとすれば、どんな事故になるか分かりません。ただそれだけでは自力飛翔できないのです。

先代は長年に渡り、飛行機人間としての訓練を実地で繰り返していますが、学校教育がゆきとどいた後継者は、グライダー能力は高くとも、飛行機としての能力は極めて低いケースが多いことも確かです。“後継者を育てる”とは“飛行機人間をつくる”ことですから、先代に従順であることは必ずしもよいこととは言えないのです。後継者がグライダーとして極めて優秀であったとしても、曳いてくれるものがなくなればいつか必ず失速します。最初は不様でも自分のエンジンで飛行する訓練と経験が必要なのです。

(思考の整理学 外山滋比古氏の著述をアレンジし記述しました。)

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