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総務の達人

ボーナスは「家庭風呂」

ボーナスの時期ですが、十分に社員に還元できた企業もあれば、中には、まだまだ業績厳しく十分に還元できなかった企業もあったかと思います。多く給料を支給できれば、確かに社員のやる気にもつながります。ただ、決して高いとはいえない給料でも、やりがいを持って頑張っている企業はたくさんあります。

戦国時代に蒲生氏郷という武将がいました。豊臣秀吉に仕えた名将でしたが、周りの大名からしょっちゅう攻められ、いくさに勝っても領地がなかなか増えず、次第に家臣に褒美がやれなくなります。考えた氏郷は手柄を立てた部下を家に呼んで「今度の手柄に対して、満足な褒美で報いることができない。そこで、礼をしたい」と言ってご馳走の用意をします。「せっかくだから、酒の前に風呂を浴びてこい」と部下に風呂を勧めました。風呂に入った部下は、窓の外から「湯加減はどうだ?」という氏郷の声を聞き、ビックリします。脇目も振らず、一心に火を焚く氏郷。顔も手も、すすで真っ黒です。(殿が自分のために風呂を沸かしてくれている。何と言う果報だろう!)部下は涙で声も出ません。次第に適温を超え、熱くなる湯。だが部下は涙が止まるまで風呂からあがる事はできませんでした。満足な褒美ができない代わりに、自ら風呂を炊き、家臣に報いたのです。

このことは口から口に伝えられ、氏郷が部下にふるまう風呂は、“蒲生風呂”と呼ばれるようになります。「俺たちも、次の合戦では思い切り働いて、殿様の風呂に入れてもらうぞ」と部下たちは勢い込み、みな心一つになって戦い、小さかった国は、やがて百万石にまでなりました。

ようやく家臣に十分な褒美が与えられると喜んだ氏郷は「いままで自分の立てた手柄を書き出せ」と命じます。このとき氏郷は「風呂だけでは申し訳ないからな」と告げました。家臣たちは大笑いをしました。そしてなかには、「いや、わたしは殿様の風呂のほうが余程ありがたいですな」という者もいました。私もそうですよとつづく者がいて城中はいつまでも笑いが収まりませんでした。

(参考:「歴史はかく語りき」童門冬二)
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