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削っていいムダと、削ってはいけないムダ

労働経済白書でも指摘されているように、日本の生産性が他の先進諸国と比べても低いことが問題となっています。利益を維持しながらも、労働時間を短縮するには労働生産性の向上が欠かせません。そのためにはムダな作業を減らし、効率よく集中的に仕事を行うことが求められるわけですが、“ムダ”の定義を見誤るとかえって生産性を落としてしまうことがあります。

「試作品をたくさん作ったけれど、ほとんど採用されなかった」「いくつか企画を立ち上げたけれど、多くがボツになってしまった」こんなことはよくある話です。一見するとムダな作業の代表例ともいえそうです。もっと的を絞り、一点に集中して行動すべきと考えがちですが、果たして本当にそうでしょうか。実は、これは大きな間違いです。確かに絞り込むことにより時間は短縮できるかもしれませんが、それでは価値ある仕事はできないのです。なぜならイノベーションを起こすには“質”より“量”が大切だからなのです。

カリフォルニア大学の心理学者ディーン・サイモントンは、優れた成果を上げるために必要なことは「多くのアイデアを出すこと」と言い切っています。例えば、ベートーベンやモーツァルトが生涯手掛けた曲は600作を超えますが、そのうち今でもよく演奏されているのは、せいぜい5~6曲です。ピカソは絵画、彫刻、陶芸からデッサンまで数万点に及ぶ作品を残しています。しかし高く評価された作品はそのうちのほんのわずかです。エジソンだって1093もの特許を出願して、実際に役立ったものは片手に収まる程度でした。繰り返しになりますが、傑出した作品や発明を残し、イノベーションを起こすためには、多くのアイデアを出すことが必要なのです。

私たちは、失敗やボツになった仕事をムダだったと考えがちです。しかしそうではないのです。それは成功のために必要なムダなのです。削るべきムダと、削ってはいけないムダをきちんと切り分けなくてはいけないのです。そうしなければ、本当の意味での生産性を上げることはできないのです。

【文責:髙山正】

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