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失敗は成功のもと

IBMの現場責任スタッフは、重苦しい面持ちで会長室のドアを開けました。なぜなら、彼は1000万ドル(現在のレートに換算しても10億円以上)の損失を会社に与えてしまたったからです。当時のIBM会長トム・ワトソン・ジュニアは、IBMを世界的企業にまで育て上げたカリスマ経営者です。直立不動でたたずむスタッフに、ワトソンは静かに「なぜ呼ばれたか分かるかね」と、尋ねました。スタッフは「クビを言い渡されるためだと思います」と恐る恐る答えました。すると、ワトソンは「クビ!?」と驚いた様子で返すと、「まさか冗談だろ、君に学んでもらうのに1000万ドルかけたんだぞ」と真顔で答えました。「これからもリスクを恐れずに思いっきりやってみるように」そう言い伝えると、スタッフをそのまま帰したのでした。
IBMの都市伝説ともいえる話ですが、失敗を恐れずに挑戦するというIBMの文化を、社員たちに伝えるには十分でした。IBMには、失敗から学び、失敗を活かす文化があったのです。
なにもそれは、IBMだけの専売特許ではありません。かつて「シェア1位か2位以外の事業からは撤退する」と言った暴君ともとられる専制的経営者、GEのジャック・ウェルチは、出来損ないの製品を作った社員に対して「おめでとう」と言い、チーム全員にテレビセットを贈ったそうです。失敗に対して報酬を支払うなんて気でも触れたのではないかと思われるかもしれませんが、「そうしないと、社員は新しい挑戦をさけるようになる」と、ウェルチは後に述べています。もちろん、失敗に報酬が支払われるからといって、進んで失敗するような人はまずいないでしょう。しかしそのメッセージは強烈です。
実は、IBMやGEのこの失敗を積極的に認めるという行為こそが、イノベーションを加速させる原動力になったといっても過言ではありません。イノベーションを起こす過程では、失敗はつきものです。それに対して厳しく叱責すれば、社員は委縮し新しいことに挑戦しようとは決してしません。イノベーションは “慎重”に良い製品をつくることではなく“確率”の問題だからです。「数学的法則だ。もっと成功したいなら、もっと失敗する心の準備が必要だ」とは、最もイノベイティブな企業といわれるIDEOの創業者、ケリー兄弟の言葉です。そのためには、社員たちが伸び伸びと、新しいことに挑戦できる組織風土が必要なのです。多くの失敗の中から多くのイノベーションは生まれるのです。

(文責:髙山 正)

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