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在宅勤務のワナに陥らないために

組織内における知識形成において「形式知」「暗黙知」という2つの考え方があります。形式知は文書や口頭で伝えられる知識を指します。例えば仕事の手順を示した「マニュアル」はその典型例でしょう。それに対し、暗黙知とはマニュアルでは伝えられない属人的なノウハウなどを指します。例えば、野球でバッティング技術をいくら言葉や文書で詳細に説明しても、ホームランを打つことはできません。手本となるバッティングをよく観察し、イメージし、共に体感して初めて学ぶことができるのです。

 

組織がその知識を創造し、イノベーションを起こすためにはこの暗黙知の共有が欠かせない、と著名な経営学者である野中郁次郎氏は述べています。同氏によると、暗黙知を共感し、組織内で共有するには、一対一での徹底的な対話(知的コンバット)が必要であると言います。例えばホンダのワイガヤ会議などはその一例でしょう。ホンダでは、職種を問わず様々な経歴の社員が社内の会議室ではなく旅館や保養所などに集まり、場合によっては酒を汲みかわしながら熱い議論が展開されます。そのような議論のなかから、ホンダは数々のヒット商品を生み出しました。さすがにアメリカで開発が進められた「ホンダジェット」は酒を飲みながらではなかったようですが、一対一で全人的に向かい合って徹底的に議論が交わされたと、プロジェクトリーダーだった藤野道格氏は回想しています。

 

在宅勤務などのリモートワークは、働き方の多様化という点では社員や会社にとっても様々な恩恵をもたらす可能性があります。しかし完全にチームから引き離し、孤立し、作業をさせるのであれば組織としてのシナジーを生むことはありえません。それでは機械に作業をさせているのとなんら変わりません。少なくともアフターコロナでは、在宅勤務の利点を活かしながらもチームとしての対話の場をうまく取り入れていくことが大切だといえそうです。

(文責 高山正)

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