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財務諸表の公表義務化に備える

2024年度の介護保険制度の改正に向けた協議を重ねている社会保障審議会は、12月5日、意見書の素案を公表しました。その中の一つに、介護サービス事業者が財務状況を公表する、という案が盛り込まれています。審議会の委員からは特に反対意見は出ていないので、次回の改正では、全ての介護サービス事業者に財務諸表の公表が義務付けられる可能性が高いです。(社会福祉法人の介護サービス事業者は、すでに財務諸表等電子開示システムにより財務諸表が公開されています。)

財務諸表の公表義務化は、全ての介護サービス事業者の財務諸表がデータベース化されることを意味します。詳細な情報が蓄積されることにより、厚労省は、介護サービス事業者の経営状況を詳細に把握・分析し、介護保険制度に係る施策や介護職員の「処遇改善加算」の検討等に活用できるようになります。介護サービス事業者側も、他社データを自事業所の経営指標と比較し、経営課題の分析にも活用できる可能性があると言えます。

また、利用者側にも影響がありそうです。財務諸表の公表は、介護サービス情報公表システムにより行われる予定です。これは、すでに利用者等のサービス選択において広く利用されていますので、財務諸表が見られるようになれば多くの利用予定者等が目を通すようになるでしょう。

今までは利用者本人もしくはその家族が、ある介護サービス事業者を選択する際に、その財務諸表の情報までは基本的には知ることができませんでした。その情報を知ることができるようになると、介護サービス事業者の選択に係る重要な「ものさし」が、新たに一つできることになります。例えば、仮に経営そのものが順調でないと判断された場合、利用の選択肢からは外されてしまうかもしれません。その逆も言えることでしょう。公表された後の影響を見据えて、財務改善に努めるなど今から準備をしていく必要があるかと思います。

【文責:高橋大輔/プロフィールはこちら

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