保険外サービスへの取り組み
4月16日に発表された東京商工リサーチのレポートによれば、2024年度における介護事業者の倒産件数は全体で179件(内訳:訪問介護86件、通所・短期入所55件、有料老人ホーム17件、その他21件)となり、2022年度の144件を大幅に上回って過去最多となりました。
倒産事業者を規模別に見ると、資本金1,000万円未満の事業者が157件を占めており、小規模・零細事業者の淘汰が進行している、介護職員の平均給与は33.82万円と全産業平均と比べて8.3万円低く、人材獲得は劣勢が続く、国の支援拡充がなければ2025年度も倒産増は避けられないだろう、と指摘されています。
2024年度の介護報酬改定率を振り返ると、2021年度比で+1.59%でした。ところが総務省統計局が公表した2025年3月の消費者物価指数(総合指数)は、2020年比較で+11.1%、前年同月比では+3.6%と大きく上昇しています。これらの物価動向や人材獲得における競争力の低さを踏まえると、今後は介護保険内サービスのみで事業を継続し、十分な利益と人材を確保することは一層困難になっていくかもしれません。
一方でこうした閉塞感を打開しようとする動きも見られます。2025年2月には、保険外サービスの振興を目的とした事業者団体「一般社団法人 介護関連サービス事業協会」が発足しました。会員一覧には業界大手が名を連ねており、その取り組みへの本気度がうかがえます。代表理事を務める水野氏は、保険外サービスについて「絶対に取り組んだ方がいい。制度内では“保険点数を積み上げるゲーム”から逃れられず、同じ土俵内での工夫には限界がある。だが保険外であれば、工夫次第でいくらでも可能性が広がっていく」と述べ、自らが経営する介護事業会社ではすでに介護職員の賃金を「めちゃくちゃ上げている」としています。
今後、保険外サービスに関する情報を積極的に収集し、自社の経営に少しずつ取り入れていくことで、新たな可能性を見いだすことができるかもしれません。
【文責:髙橋大輔/プロフィールはこちら】