消費と生産の主役の退場、その前に
現在の日本で一番人口が多い年齢層はどこかご存じだろうか。
1971年から74年に生まれた「団塊ジュニア世代」、つまり今の50歳前半の人である。
この人たちの年間出生数は200万人を超え、4年間で816万人が生まれ、日本社会のボリュームゾーンを形成している。2024年の出生者数が72万人だったことを考えるといかに多いかがわかると思う。
この世代の人たちは現在50代前半とまさに働き盛りで所得水準も高く、子育てにも一段落がつく年代であり、購買意欲は旺盛である。したがって、この人たちの行動・労働・消費などを前提としているビジネスは多い。御社の場合はいかがだろうか。
しかしこの「ボリュームゾーン」は、10年後の2035年には60歳を迎え、定年退職や高齢者への移行が始まり、見える景色はだいぶ変わってくるはずだ。
まず働き手の問題は大きい。団塊ジュニア世代が60歳になり退職するから、若い世代で補充しようと思っても、30歳くらいの人は100万人ちょっとしか出生していない。つまり人工的に半分しかいないのだ。特に地方に若者は少ない。それに「上意下達」や「体育会系」的なことは若い世代には受入られず、チーム協調型、ワークライフバランス重視、柔軟な働き方へと職場文化の変化が加速するだろう。
もちろん製品もかわる。例えば自動車などは当然団塊ジュニアにフォーカスしてマーケティングや製品開発をしているはずだ。しかし若い世代にとっての自動車の価値観を反映した「非所有」「環境意識」などを重視した製品設計に変わっていくはずだ。
さて他人のことはともかく、問題は自分の会社だ。
この人口動態の変化はもちろん止められない。問題はこの現実をどう受け止め、備えるかだ。この変化を先取りし、経営戦略・人事戦略・商品戦略を再構築する必要があるだろう。ただこれはピンチというだけではない。チャンスのときでもある。若い世代の感性をとりいれ、団塊ジュニア世代以降の「次の人生」を豊かにする提案ができれば、これまでの業界の王者を打ち破るチャンスにもなりうると思う。
【文責:飯沼新吾/プロフィールはこちら】