「上司選択制度」という新しい人材マネジメント
従業員が自ら「この人のもとで働きたい」と上司を選べる、そんな驚くような制度が、いま注目を集めています。
建設業界のさくら構造株式会社(北海道札幌市)では、年に一度、従業員が自分の直属の上司を指名できる「上司選択制度」を導入しています。従来の「人事主導の配属」とは一線を画し、従業員の主体性を引き出す画期的な取り組みです。
この制度の導入背景には、「自律的に働く従業員を育てたい」という明確な経営意図があります。そして実際に、次のような成果が報告されています
- 離職率の劇的な改善
→さくら構造株式会社では年間離職率が 10%から1%に減少 - 自律型人材の育成
→自ら上司を選んだ手前、成果責任を強く意識するようになり、成長の動機付けが変化 - エンゲージメントと心理的安全性の向上
→信頼できる上司のもとで働くことで、安心して挑戦しやすくなる風土が形成 - マネジメント力の底上げ
→上司は「選ばれる存在」になるため、日常的に信頼構築に努めるようになり、組織に良質な緊張感が生まれる
もちろん、制度の導入には企業風土や体制整備が必要で、すべての企業に万能な仕組みとは言えません。しかしながら、「上司・部下の関係性を一方通行ではなく、双方向で選び合うものへと見直す視点」は、今後の人材マネジメントにおいてますます重要になると考えられます。今後の組織戦略を検討するうえで参考になれば幸いです。
【文責:相澤秀次/プロフィールはこちら】