特養「もくせい」の改善事例
働きやすい職場環境づくりに取り組む介護事業者の表彰式が 8 月 27 日に行われ、茨城県の特別養護老人ホーム「もくせい」が総理大臣表彰を受賞しました。その取組は、見守り機器の導入、外部研修の推奨、有給休暇取得促進などそれほど目新しい取り組みではありませんが、巡視時間が 53 分→26 分、排泄介助時間が 180 分→90 分、離職率 4.9%→0%など劇的な改善が見られました。なぜ、このような改善が可能だったかを考えたいと思います。
まず、取り組みを始めるにあたり、「組織変革チーム」を立ち上げトップの強い意思のもとで職員全体を巻き込んで課題の洗い出しを徹底的に行いました。これにより出た課題の一つにせっかく導入した見守りセンサーは入所者が離床したらアラームが鳴る程度の活用にとどまっていた事がわかりました。そこで、排泄介助のタイミングを機器のデータで把握し夜勤者の巡視の頻度・時間を削減するように巡視計画を作り直すことで前述のような業務時間の短縮を実現できました。このように「現場任せ」ではなく「組織の方針」として定着したことが成功につながりました。また、業務改善の効果を測定し業務時間がどのくらい減ったかを具体的な数字で示すことにより、「やってよかった」「負担が減った」という実感が職員に広がり、現場に浸透しました。
そして、業務時間削減により有給休暇の積極的な取得や外部研修への参加、さらには地元アパレル企業とのユニフォームの共同開発など、従来にはない取り組みを行う時間を生み出すことができました。これにより職員のやりがいに繋がり、また改善に取り組むといった好循環が生まれました。すべてを一度に変えるのではなく、小さな改善を積み重ねる。現有の職員と設備、制度を見直し、部分的な改善からスタートしても、これらを戦略的にデザインすれば、「もくせい」のような成果を得ることは十分可能と思います。
【文責:竹内光彦/プロフィールはこちら】