現場別採算の重要性
建設業の経営者は、日々の現場を見ながら「この工事は順調」「あの現場は厳しい」と判断する優れた感覚を持っています。こうした長年の経験に基づく“肌感覚”は非常に大切ですが、感覚だけに頼ると実態とずれてしまうことがあります。
例えば、忙しく動いている現場でも、外注比率の高さや残業時間の増加で粗利が削られている場合があります。逆に「厳しい」と感じていた工事が、数字で確認するとしっかり利益を出していることもあります。感覚を数字で裏付けることは、経営判断の精度を高める上で欠かせません。
【現場別採算】
そのために有効なのが「現場別採算」です。現場ごとに売上・直接原価(人件費・外注費・材料費等)を整理して、粗利を算出するだけで、黒字か赤字かが一目でわかります。月次で集計すれば
感覚と実態の差を確認でき、改善に向けた次の一手を素早く検討できます。
特に注目したい指標は次の通りです。
・現場粗利率=(売上-原価)÷売上
・人時生産性=現場売上÷総労働時間
・外注比率 =外注費÷総直接費
これらを確認することで、経営の見える化が一段と進み、見積精度や人員配置の改善につながりさらには資金繰りの安定にも寄与します。
経営者の肌感覚は現場と経験に基づく大切な判断材料です。そこに数字という客観的な裏付けを加えることで、より正確に自社の経営状況を把握することができます。まずは Excel などでもよいので現場ごとの売上・原価を整理し、感覚と数字のギャップを確認するところから始めてみるのはいかがでしょうか。
【文責:本木 智也/プロフィールはこちら】