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月刊未来経営

なぜなのか、つまり何なのか、という思考

最近の若い人に(こう言うと自分が歳を取った証拠でもあるが)、少しむずかしい仕事を頼むと、すぐに「それは教わっていません」「マニュアルはありますか」と聞き返されることが多い。

人手不足が目立つ昨今、会社側も新人を荒っぽく扱うことはできず、できるだけ具体的なマニュアルを整え、先輩も丁寧に教える。弊社でも同様で、マニュアルアプリを2本導入し、フル稼働している。先輩も可能な限り細かく説明するので、たしかにド新人でも仕事は“なんとか”できるようになる。だが、本当にそれで良いのだろうかと感じる瞬間がある。

ビジネスの世界ではしばしば「具体=実戦的で役に立つ」「抽象=机上の空論で役に立たない」と決めつける風潮がある。しかし、これはとんでもない思い違いだ。

具体的なマニュアルや指導がどれほど優れていても、所詮は「ある仕事」の範囲に限定されている。抽象化や論理化ができない人は、同じような失敗を何度も繰り返す。少し捻られただけでもう分からない。なぜなら、現実の仕事は一つとして同じものがないからだ。抽象化、論理化によって事の本質を捉えておかないと、せっかくの詳細なマニュアルも丁寧な指導も次には活かせない。

抽象化と具体化を往復する“思考の運動”を、頻繁にしかも高速で(それも大きな幅で)行える人ほど応用力があり、成長が早い。逆に、その訓練を積まず、与えられたマニュアルをなぞるだけでは、応用の利かない人材ばかりになってしまう。

これは経営でもまったく同じである。もちろん、会社運営は抽象論だけでは前に進まない。しかし、具体のレベルを右往左往しているだけでは、有効な打ち手は生まれない。

抽象度を上げて事の本質を考える。具体的な現象や数字が何を意味するのかを論理的に整理する。問題の本質はどこにあるのか仮説を立て、解決策を考え、実行し、トライ&エラーを繰り返す。これは経営において何より重要な姿勢と思う。

【文責:飯沼新吾/プロフィールはこちら

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